何かを買うとき、「自分がこれを選択した」。
そんなことが都度、頭に浮かぶようになった。
これまでは何をするにしても、どんな選択をするにしても、他の誰かの指示に従ってそうしているような感覚であった。
とても長い間。
それが今、時折「私」というものが顔をのぞかせる。
自分はこれが好きなんだ。
自分はこれをやりたいんだ。
そんなことが頭をよぎると、「私」というものの輪郭が見えてくる。
いつもではないけれど、時々。
とっても些細なことであり、また普通の大人にとっては当たり前であり、気にしなくてもいいものだろう。
だけど私には、いちいち「私」というものを確認する作業が必要なのだ。
そしてこれができるだけでも、とても大きな進歩であり、重大な発見。
これまでは、暗闇の中でどこを進んでいるのかわからない状態。
そこにやっと、一筋の光が見えてきた感じである。